A.はじめに
長野県東部の南佐久郡には多くの鉱物産地があり採集には最適の地域である.
今回,帰省を機に長野県南佐久郡の鉱物産地の幾つかを訪れた.武石村武石の
「武石」採集,同二本木の「焼餅石」採集に続いて佐久町の大日向鉱山を訪れ
た.時間の関係で詳しい探査が行えなかったのは残念であるが,典型的なスカ
ルン鉱床の磁鉄鉱-黄鉄鉱鉱石を採集することができた.
B.産地及び交通
<産地>
大日向鉱山は長野県南佐久郡佐久町大日向霧久保沢の上流にある.高品位の
鉄鉱石を産出し,戦中には特に盛んに採掘されたようである.典型的なスカル
ン鉱床で,霧久保沢沿いの林道入口近くの採石場には花崗岩の貫入が見られる.
鉱床はこの花崗岩体の貫入によって生成されたものであろう.
鉱山には多くの旧坑が残されており,林道から一番近い坑道内に入ったが,
その奥行きは相当なもののようであった.また上部には大規模な露天掘り? の
跡があり,多量の鉱石が残されていた.また斜面にもあちこちに鉱石が転がっ
ていた.ただ,ズリは落葉に覆われてやや探しにくかった.
<交通>
最寄駅:JR小海線 海瀬駅
C.採集鉱物
硫化鉱物1種,酸化鉱物1種を採集した.
硫化鉱物
1.黄鉄鉱 pyrite
磁鉄鉱と共生する塊状〜皮膜状結晶.金属光沢.
酸化鉱物
2.磁鉄鉱 magnetite
黄鉄鉱を伴う塊状の鉱石.強い磁性を持つ.特に当産地の磁鉄鉱は強い磁力
をもつことで有名であり,天然磁石といえるものが産出する.また2〜3mmの
八面体自形結晶の集合体も採集した.
D.おわりに
2日間での短時間内の駆け足での採集であったが,それぞれそれなりの収穫
があり良かった.また,当地域にはこれ以外にもクロムを採掘した佐久町大日
鉱山,同本郷鉱山(硫砒銅鉱),同余地鉱山(ズニ石)など多くの鉱物産地が
あり,またゆっくりと探査を行いたいものである.
調査の際,山腹に苔むした小さな石堂を見つけた.良く見るとそこには「斯
業繁盛」と刻まれていた.かつて鉱山で働いた人々のことや時代の流れを感じ
させる記念碑のような気がしました.いずれはここも忘れられてしまうのだろ
うか,とそんな気持ちになりました.
E.参考文献
降旗和夫編(2001):長野県地学のガイド 改訂版,(コロナ社)
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