89)秋の奥秩父巡検その1―埼玉県秩父市(旧 大滝村)秩父鉱山道伸窪2 Doshinkubo of
Chichibu Mine,Ohtaki Village,Saitama Pref.
A.はじめに
秋になり,いくらか涼しい季節になった頃だったと思うが,まだ卒論も時間が
あるからと久々に採集に出掛けることにした.一学年上のIN氏,同級のSD君,一
学年下のMK君がメンバーだった(ように記憶している).
B.産地及び交通
<産地>
秩父鉱山は松原・加藤(1982),須藤(1979)などに詳しく紹介されている,
関東を代表する鉱物産地である.産出する鉱物の数は非常に多く,現在でもかな
りの種類の鉱物が採集可能である.また前述のように水酸エレスタド石という新
鉱物も当地から発見されている.当地は典型的なスカルン鉱床であり,昭和中期
まで各種の金属鉱物,珪石を採掘していたが,現在では石灰石の採掘だけが行わ
れています.そのため平日では細い県道で,ダンプとのすれ違いに苦労すること
もあります.
また歴史も古く,甲斐武田氏が金を採掘したとも言われ,江戸時代にはエレキ
テルなどの発明で有名な平賀源内が探鉱に訪れています.昭和後期まで大黒坑,
赤岩鉱床など数多くの鉱床が開発された.
東京方面からなら国道140号線から中津川沿いの県道210号線に入りひたすら上
流へ向かう.ただ現在はダム工事のため道が以前と変わっていることに注意が必
要である.名古屋・山梨方面からなら塩山市から雁坂トンネル経由が便利.当時
にして 2年振りの来訪となったが,県道も一部付け替って随分走りやすい区間が
増えていた.
大黒坑から,更に上流に向かって進み,雁掛トンネルを抜けると,かつては栄
えていたであろう鉱山町が現れます.ここを通過して,しばらく行くと,道は右
に大きくカーブする.すると,右手に小さな工場らしい建物があるのでここに交
通の妨げにならないように駐車します.
建物の対岸にある,河原に流れ込む沢の転石やその露頭から行います.露頭は
それなりに掘られていて,周囲にはベスブ石やザクロ石をたくさん含んだスカル
ン塊がごろごろ落ちています.これらのスカルンを割ると,たまに水酸エレスタ
ド石が産出するようです.
<交通>
最寄駅:秩父鉄道 三峰口駅 「中津川」行きバス利用 「出合」下車
C.採集鉱物
珪酸塩鉱物2種を採集した.
珪酸塩鉱物
1.ベスブ石 Vesvianite
緑褐色〜淡褐色半透明の粒状で産出するものが多いが,たまに短柱状の結晶系
を示すものもある.このようなものは外見の類似するザクロ石との判定が容易で
ある.かつては 5cm以上の大型の結晶が産出したが,現在ではそこまでのものを
採集するのはかなり難しいと思われる.
ベスブ石はスカルン鉱物の代表的なものの一つであり,当産地以外でも,長野
県甲武信鉱山や,神奈川県白石沢などが有名な産地である.ただし,スカルン以
外にも産出し,例えば,英名の起源となっているイタリアのベスビオ火山のよう
に火山岩中の結晶として産出する場合もある.
2.灰ばん柘榴石 Grossular
緑色粒状で産し,小さなベスブ石と酷似するが,結晶の感じで区別出来る場合
もある.こちらも,スカルン中に結晶面を多く残す結晶があり,大理石
が溶けて,その結晶が母岩から出て来たものは見応えがある.
時折,カルシックなスカルンの中に淡紫色の水酸エレスタド石らしいものが見
られた.余り見栄えのするものでもないためか,探せば案外良く見つかる気がす
るが,どうだろうか.また,かつてはザンソフィライトの名で知られたクリント
ン石も道伸窪では散見されるらしいので,機会があったらまた訪れてみたいと思
っている.
D.おわりに
随分前の巡検記録なので随分記憶が薄れているなと感じる.写真も撮ってあっ
たのだが,PCが壊れて全部飛んでしまったかも知れない.記録はちゃんと残して
おかないと後で困ることが多いので,忘れないうちになるべく多く巡検記録を書
き記しておくつもりです.
E.参考文献
松原聰・加藤昭(1982):鉱物採集の旅,(築地書館)
須藤和人(編)(1979):埼玉県地学のガイド,(コロナ社)
戻る