A.はじめに
10月末に,運良く進路が決定した私は,すっかり気楽になリ,採集を再開した.
東京に近い飯能市の岩井沢鉱山で,新鉱物種山石の産出することを知った私は,すぐに採集
に行くことにした.なぜなら,私は1つも日本新産の鉱物を持っていないからである.やはり
鉱物採集をしていると,自力採集の新鉱物が欲しくなります.
しかし,結果は惨敗.鉱山のズリすら発見できませんでした.成果といえば,一つ前の沢の
上流の崖に別の鉱山跡を発見するに過ぎませんでした.しかし,ここには何もなく,金属光沢
をもつ軟マンガン鉱と土状の赤鉄鉱を見出すのみでした.
後で調べてみたところ,どうやら岩井沢鉱山はもう一つ先の沢にあったようです.また今度,
訪れて種山石について報告できるようにしたいと思います.
B.産地及び交通
<産地>
埼玉県飯能市にある岩井沢鉱山は,マンガンを目的に採掘された鉱山で,西武池袋線西吾野
駅の北4kmほどのところに位置している.駅を出ると,道は左に向かって下っている.道を下
りきったら,右に進む.道の右側を川が流れているが,これが北川である.これに沿って,ひ
たすら進む.地形図「正丸峠」を持っていきましょう.駅を出て,1時間ほど歩き,岩井神社
付近の分岐を右に進んでいくと,うっそうとした森のなかを進む林道(舗装道)に入る.分岐
から800mほど進むと,左手から小沢が入っている.更に250mほど行くと,道の脇に,小屋が
ある.本来はこの小屋の脇を抜けて,東に100mほどの涸れ沢にたどり着かなくてはならない
(ここにズリがあるらしい)のだが,私はこの小屋のすぐ手前の沢でマンガン鉱石を探してい
たのである.2時間程この沢を上下したのだが,余りに何もないので,先ほどの小沢にいった
ん戻ると,真っ黒なマンガン鉱石が落ちていたので,沢沿いの道を遡っていくと,平坦になっ
ている場所があり,その上方の急斜面に旧坑道らしいものがあった.なんとなく踏分け道らし
きものもあったので,上っていくと,やはり坑道だった.旧坑はかなりの大きさがあり,10m
位の奥行きもある.しかし旧坑内には何もなかった.また,この旧坑の東側の斜面にも,旧坑
が2つあった.こちらの旧坑にも何もありませんでした.鉱物らしいものといえば,旧坑周辺
の青っぽい金属光沢を持つ軟マンガン鉱と,褐色の廃石に伴う土状の赤鉄鉱位である.
岩井沢鉱山は,秩父古生層中の層状マンガン鉱床であり,当地の鉱物については加藤・松原
(1982)の報告がある.飯能周辺には,当産地以外にも大蔵鉱山(正丸駅西方),
吾野鉱山(吾野駅北方)などのマンガン鉱山があったが,現在全ての鉱山は閉山となっている.
また,加藤・松原(1982)は,これらの位置を示している.
ここで,層状マンガン鉱床について説明を加えますと,日本の,主に中生代の堆積岩中に存
在する,マンガンの炭酸塩,酸化物,珪酸塩を主成分とする鉱床のことです.かつては,足尾
山地,関東山地,丹波地方などに数多くのマンガン鉱山が稼行されていた.層状マンガン鉱床
は,浅海で堆積した鉱床であり,熱水活動が関連しているとされているが,なかには付近に全
く熱水活動の形跡の無い(ロシア連邦 ニコポル鉱山)ものもある.また,この種の鉱床は各
種の変成作用を受けている場合も多い.
また,日本ではこれらの堆積性マンガン鉱床に伴って,各種の新鉱物も発見されている.関
東周辺ではここ飯能市岩井沢鉱山の種山石,桐生市茂倉沢鉱山の鈴木石,長島石,奥多摩町白
丸鉱山の多摩石(東京都初の新鉱物),山梨県落合鉱山のマンガンパンペリー石がある.
<交通>
最寄駅:西武池袋線西吾野駅
C.採集鉱物
酸化鉱物2種が採集できた.
酸化鉱物
1.赤鉄鉱 hematite
褐色のズリ石の中に赤色土状で産する.色合いが辰砂のように見えたが,分析したら赤鉄鉱
であることが判明した.
2.軟マンガン鉱 pyrolusite
マンガン鉱石の表面に,黒色酸化皮膜として産出.青色金属光沢をもつものがみられる.
なお,岩井沢鉱山の目玉の種山石について,書いておきます.加藤・松原(1982)によると,
石英,菱マンガン鉱と共生する褐色のベメント石の鉱石中に淡黄緑色ないし灰黄緑色葉片状結晶
の集合体からなる幅数oの以下の脈として産出すると報告されている.また,もう一つの原産地
熊本県種山鉱山では,灰黒色繊維状結晶として産出するようである.
D.おわりに
奥多摩鉱山に続いてマンガン鉱山を訪れたが,今回は私のミスで完全に外してしまった.次
こそは種山石を採集したいと思います.
岩井沢鉱山は,駅からかなり遠いのに,バスの便がなく,かなり不便です.片道1時間半の
歩きはさすがにこたえます.
E.引用文献
加藤昭・松原聰(1982):“鉱物採集の旅1 東京周辺をたずねて”,(築地書館)