58)地学会結成記念巡検 その2―埼玉県大滝村秩父鉱山大黒坑3 Daikoku Adit of
Chichibu Mine,Ohtaki Village,Saitama Pref. No.3.
A.はじめに
いよいよ軌道に乗り始めた地学会は,今度はNSさんのリクエストにより秩父
鉱山で採集を行うことになった.今まで行ったことのなかった場所も,前々日に
成田のYさんに情報を頂き,準備万端となった.
当日はいつものように近くのコンビニを4時出発.家が若干遠いKG君を回収
し,大通りに出ようと思うと,FJ君が突然絶叫する.「あッ,人が倒れとった
よ!!」「どうせ酔って寝てるんだろ〜,大丈夫だよ.」と返すが,どうやら彼の
故郷の近くではそんな人を見たことがないのか「あれは絶対死ぬって!」と言う
ので,とりあえずUターンして,車を止め近付いてみたら,案の定,酔っ払いだ
った.しかし,このままほって置くのも,確かに危険なので,何とか住所を聞き
出して,輸送することになる.しかもどうやら筆者の住まいのすぐ近くらしい.
「平気です,平気です」という彼を無理矢理車に積んで,無事に家まで返す.
この行いが今日の採集成果に反映されたのだろうか… と今になって感じる.
B.産地及び交通
<産地>
秩父鉱山は松原・加藤(1982),須藤(1979)などに詳しく紹介されている,
関東を代表する鉱物産地である.産出する鉱物の数は非常に多く,現在でもかな
りの種類の鉱物が採集可能である.また水酸エレスタド石という新鉱物も当地か
ら発見されている.当地は典型的なスカルン鉱床であり,昭和中期まで各種の金
属鉱物,珪石を採掘していたが,現在では石灰石の採掘だけが行われています.
また歴史も古く,甲斐武田氏が金を採掘したとも言われ,江戸時代にはエレキ
テルなどの発明で有名な平賀源内が探鉱に訪れています.金は閃亜鉛鉱に伴う,
ひも状のものが大変有名である.
東京方面からなら国道140号線から中津川沿いの県道210号線に入りひたすら上
流へ向かう.ただ現在はダム工事のため道が以前と変わっていることに注意が必
要である.名古屋・山梨方面からなら塩山市から雁坂トンネル経由が便利.県道
を進むと,左手に坑道と作業場があるところに出る.ここが秩父鉱山大黒坑です.
採集は河原と,そこに流れ込む沢の転石から行います.金属鉱物を多く含む鉱
石を見つけるときに,鉱石の新鮮な面が出て,金属光沢が分かれば良いのですが,
金属光沢は表面が酸化して真っ黒くなったり,赤茶けていることがある.そのよ
うな時は持ってみて重く感じる石(金属鉱物は比重が大きいので重く感じる)を
割ると良い.また金属鉱物の鉱石以外にも,花崗岩質ペグマタイト,晶質石灰岩
(いわゆる大理石)が採集できます.
<交通>
最寄駅:秩父鉄道 三峰口駅 「中津川」行きバス利用 「出合」下車
C.採集鉱物
硫化鉱物6種,炭酸塩鉱物3種,珪酸鉱物1種,珪酸塩鉱物2種を採集した.
硫化鉱物
1.黄鉄鉱 pyrite
スカルン中など最も多量に存在する金属鉱物.自形結晶も多く,金属光沢も強
いので分かりやすい.黄銅鉱とよく似るが,区別の仕方として黄銅鉱より色が淡
いこと,自形結晶の割合が高いことが挙げられる.黄銅鉱,方鉛鉱など各種の硫
化鉱物と共生したり,菱マンガン鉱中に粒状結晶として含まれている.
2.黄銅鉱 chalcopyrite
最も重要な銅鉱.真鍮色金属光沢.表面は酸化されやすい.黄鉄鉱と共生.自
形結晶をなすものも見られる.
3.方鉛鉱 galene
その名の通り六面体のサイコロ状結晶の集合体で産する.比重が大きく,小さ
な塊を持ってもズッシリとした重さを感じる(比重大7.5g/p3).帯青黒色金
属光沢.ろうそくの炎で熱すると角が融解し,丸くなる.
4.閃亜鉛鉱 sphalerite
最も重要な亜鉛鉱.色彩の変化が大きく,黒色不透明金属光沢のものから,橙
色透明ガラス光沢のものまである.当産地のものは鉄を多く含む,鉄閃亜鉛鉱と
いわれるものである.黒色不透明だがガラス光沢が強い.硬度3.5〜4,比重4.0
g/p3.
5.硫砒鉄鉱 arsenopyrite
新鮮なものは銀灰色金属光沢を持つ.独特の短柱状結晶をなす.
6.ブーランジェ鉱 boulangerite
秩父鉱山の“名産品”の一つ.かつては方鉛鉱を主とする鉱石の上をびっしり
埋めるようなものが産出したが,現在では菱マンガン鉱中の細脈や,硫化鉱を含
む白っぽい鉱石の中にやはり細脈として産出する時が多いようである.
今回,訪問3度目でようやく肉眼でも分かるレベルの標本が採集できた.まだ
顕微鏡では見てないがさぞ,綺麗に見えるだろうと思っている.
炭酸塩鉱物
7.方解石 calcite
晶質石灰岩を形成するものや鉱石に伴う脈石鉱物として産出.特徴は白色半透
明で三方向への完全なヘキ開があること,塩酸に発泡して溶けること,等がある.
またマンガンを含むことによると思われる,やや赤かったり,青みを帯びたもの
もみられる.
8.菱マンガン鉱 rhodochlocite
当地でよく見られる金属鉱物.マンガンの主要鉱石の一つ.大黒鉱床はスカル
ンだが,その中や周辺部に熱水脈も存在し,火成活動のあったことを知る良い見
本になる.ここでは菱マンガン鉱は脈石となっているように感じた.
主に桃色塊状をなして産出し.中に黄鉄鉱,ブーランジェ鉱などの金属鉱物を
伴う.表面を酸化マンガンの酸化皮膜が覆っているため,河
原の転石の中では分かりにくい.表面の黒いマンガン鉱石を見つけるにはコツが
あり,真っ黒で重たい石を探すということである.マンガンは金属元素なので,
比重が大きいことを利用するのである.
9.孔雀石 Malachite
銅の最も普通な二次鉱物.当地では黄銅鉱は普通にあるが意外と孔雀石は少ない.
珪酸鉱物
10.水晶 rock crystal
各種の鉱石や花崗岩質ペグマタイトの晶洞中に数mmから1cmくらいの小さな水
晶が産する.
珪酸塩鉱物
11.鉄電気石 schorl
花崗岩質ペグマタイトの晶洞中に数mmから1cmくらいの黒色柱状結晶が産出.
12.正長石 orthoclase
花崗岩質ペグマタイトの晶洞中に最大1cmちょっとの白色柱状結晶が産出.
D.おわりに
今回も前回同様に産地の案内を勤め,皆さんに観察・採集をしていただいた.
また筆者も今まで採集できなかったブーランジェ鉱を採集した.全員思い思いの
標本を採集できたようで何よりだと思っている. <2004/9/? 採集>

図1 鉱山施設跡(旧坑) 図2 沢近くの旧坑
E.参考文献
松原聰・加藤昭(1982):鉱物採集の旅,(築地書館)
須藤和人(編)(1979):埼玉県地学のガイド,(コロナ社)
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