A.はじめに
栃木県日光市東部に位置する小来川鉱山は,昭和中期まで銅を
採掘した鉱山である.以前から各種の銅の二次鉱物の産出でその
名を知られている.草下(1982)にも詳しく紹介されている.
今回茨城県妙見山でのリチウムペグマタイトの観察を終えたの
ちに時間がかなり余ったので,栃木方面に向かい,2年振りに小
来川鉱山を訪れ,数種類の銅の二次鉱物をはじめとした各種の鉱
物が採集できたので報告する.
B.産地及び交通
<産地>
今市・日光市方面から鹿沼市方面に抜ける県道の西側に位置し
ている.「峠下」バス停からやや今市方面に距離を戻すと,林道
入口があります.林道入口から15分ほどで第一のズリに到達し,
さらに10分ほど歩くとかつての作業場跡地と広大なズリがありま
す.車種にもよるが,ある程度は林道に乗り入れることは可能で
あるが,草木が生い茂っているので小傷は覚悟しなくてはならな
いし,慎重な運転が必要とされる.
小来川鉱山は,石英斑岩に関連する熱水鉱脈鉱床であり,品位
は割合高かったようである.脈石鉱物は石英,方解石.またこの
近辺には同様の石英斑岩−石英脈に関連した銅鉱床がいくつか知
られており機会があったら訪問してみたいと思っている.
<交通>
最寄駅:JR日光線 今市駅
C.採集鉱物
硫化鉱物2種,炭酸塩鉱物3種,硫酸塩鉱物2種,珪酸鉱物1種
が採集できた.
硫化鉱物
1.黄鉄鉱 pyrite
著しく熱水変質した鉱石中に数o大の立方体自形結晶をなす.
表面は酸化してやや変質している部分もあるが,金属光沢がある.
黄銅鉱と共生する.
2.黄銅鉱 chalcopyrite
黄鉄鉱と同じ鉱石中に塊状半自形結晶で産出する.やや酸化し
て表面は真鍮色となっている.黄鉄鉱よりも黄色味が強いことで
判別する.
炭酸塩鉱物
3.方解石 Calcite
白色半透明.自形結晶あり.方解石は三方向へのヘキ開明瞭で,
塩酸に溶けるので,石英との鑑別は容易である.
4.孔雀石 Malachite
緑色塊状〜皮膜状.当地の銅の二次鉱物の中では最も多産する.
藍銅鉱と同成分.そのためしばしば両種は共生する.いわゆる,
緑青(例えば,10円玉の緑になった部分)というのは孔雀石と同
じ炭酸水酸銅である.
余談だが孔雀石は緑色の顔料として古代から使われていた.ま
た藍銅鉱も同様に青色の顔料として利用されていた.
5.藍銅鉱 Azurite
濃青色粒状結晶.かつてまとまった産出があり,なかなかの結
晶が多数得られたようであるが,現況は不明.
硫酸塩鉱物
6.ラング石 Langite
青色粒状結晶.水色の短柱状結晶をなす.皮膜状のものはポス
ンジャク石と酷似して,肉眼での判別は困難であると思われる.
産出は多くないが,.
珪酸塩鉱物
7.銅アロフェン Cu Allophane
淡青色粒状〜皮膜状.以前,銅緑バンとして書いたが,こちら
の方が妥当だと思われる.淡青色は2価の銅イオンに起因する.
D.おわりに
2年振りの訪問であったが,比較的規模の大きな鉱山だけあっ
て状況は大きく変化していなかった.帰りは道が随分混んでいた
思い出がある.
E.参考文献
草下英明(1982):鉱物採集フィールドガイド,(草思社)