注意:竹森水晶山は2003年4月末より,産地荒廃のため相当期間採集禁 止となりました.
A.はじめに
山梨県は,昔から水晶の産地として有名です.特に,甲府市北方の金峰山を中心とした地
域では,水晶を目的とした鉱山があったほどで,日本屈指の水晶産地でした.現在は,外産
の安い水晶が大量に流通しているので,水晶の鉱山は全て閉山しています.
第1回に引続いて,山梨県塩山市竹森を紹介します.竹森の水晶は日本での「草入り水晶」
の代表的産地とされています.「草入り水晶」とは水晶の中に,苦土電気石が入っている(
これをインクルージョンと呼ぶ)もののことで,本当に草が入っているわけではありません.
また,私が初めて,採集らしい採集をした産地で,初めての採集がここだったという人が
私の周りにもいます.草加(1982)にも大きく紹介されており,良品は減ったとはいえ,日
本各地から,いまだに沢山の人が訪れています.しかし一部の心無い採集者による,過激な
までの採集により,地主の雨宮氏が無断での入山禁止を余儀なくされました.悲しいことに
日本各地にはこのように産地荒廃により採集禁止となってしまった場所が数多くあります.
その中でこの竹森の水晶山は,節度のある採集を心がけることで誰もが楽しめる,数少ない
貴重な産地といえます.この貴重な産地をいつまでも守っていきたいものです.
2001年11月から約5ヶ月ぶりに,再び友人k君と共にの竹森の水晶山を訪れたが,前回を
上回る良品が採集できた.表面採集が中心でしたが,まずまずの成果が上げられました.根
気良く頑張れば,更なる良品の期待も出来そうです.なお,掘り込んで採集を行う際には,
必ず埋め戻して下さい.
B.産地及び交通
<産地>
塩山市竹森の水晶産地はJR中央線塩山駅の北約4kmの小倉山西側,北側の斜面にありま
す.塩山駅からですと,甲府方面に向かい,中央本線の下をくぐり,青梅街道(国道411
号線)に入ります.しばらく進むと「千野橋」という大きな橋の辺りに着きます.北の方の
道に進路をとります.分かれる道が多くありますが,目印は「ザゼンソウ自生地」の案内板
やコンクリ工場です.ここはかつて牧丘町乙女鉱山の選鉱場だったところです.
さて更に道を進んでいくと,前方に神社と小学校が見えてきます.この神社は玉宮神社と
いい,「水晶山入口」の案内板があります.益富(1974)によると,この神社の御神体は記
録上日本最大の巨大な水晶(高さ2.1m,周囲1.5m以上)だったそうです.しかし,明治元
年頃盗難に遭い,現存しません.この大水晶は今もどこかで眠っているのでしょうか.神社
の御参りして,良品の採集をお願いした後,雨宮氏に採集の許可を頂きましょう.雨
宮さんは大変な迷惑を被っていますが,丁寧にお願いすれば採集の許可をいただけると思い
ます.そして注意事項(ごみを捨てない,怪我をしない等)を聞いて,心にしっかり刻んで
おきましょう.
許可を頂いたら,案内板に従って水晶山を目指しましょう.細い農道が網目状に走ってい
るので少し分かりにくいかもしれません.付近で作業している方に訪ねてみれば安心です.
山道に入ると害獣除けの柵があります.ゲートを開けて(閉じるのを忘れないように!),
山道を登っていきます.傾斜は緩く,ガケもなく安全です.しばらく進むと小さな神社が木
々の間に見えてきます.これが先ほどの玉宮神社の奥の院でこの裏一帯が水晶産地です.こ
こ竹森の水晶山は明治から昭和の初期に,石英脈の晶洞に産する水晶を盛大に採掘したので
廃石はかなり豊富です.山頂付近にかつての坑道(埋没している)があり,西,北側斜面に
大量の廃石があります.水晶はこのズリの中から見つけます.
また,母岩付きの水晶もありますが,母岩の様子はどうでしょうか.白っぽく,きらきら
と輝いています.これはもともとの地層である,小仏層の堆積岩が地下に貫入してきた花崗
岩と接触し,変成して作られた岩石です.ここでは,グライゼン(英雲岩,石英と雲
母からなる変成岩)とホルンフェルスが見られます.鉱物採集の際には,ただやみくも
に目的の鉱物を探すだけでなく,その成因などを考察できる試料を見つけらるようになると,
鉱物の生成過程をより理解しやすくなるでしょう.これが意外と難しいものなのです.もち
ろん私もまだまだです.
<交通>
最寄駅:中央本線 塩山駅
バス:玉宮行き 「玉宮小学校前」(一日5往復)

図1 竹森での採集の様子(2002:Y氏撮影・提供)
C.採集鉱物

図2 鋭錐石 図3 マリモ入り水晶(図2,3いずれもN氏撮影・提供)
酸化鉱物
1.赤鉄鉱 hematite
晶洞の水晶上に皮膜として産出したり,水晶中に包有物となるものもある.今回,両方が
採集できた.
2.鋭錐石 anatase
黒青色で強い光沢を持つ.成分は酸化チタン.金紅石,板チタン石とは同質他像.主とし
て水晶の根本や白雲母の中に産する.名前の通り,鋭い錐状.一見電気石の端面と見間違え
ることもある.しかし光沢が違うこと,条線の発達の違いから,判別できる.しばしば平行
連晶をなす.
今回は,西側ズリの下側で採集した石英脈晶洞部分の水晶の根本に群晶をなすものを発見
した.
3.板チタン石 brookite
褐色ガラス光沢.板状.成分は鋭錐石と同様酸化チタン.白雲母の集合の中に産するが,
粘土で汚れた雲母と見誤りやすい.
4.褐鉄鉱 limonite
赤鉄鉱の分解生成物と思われる.団塊をなすものもある.
珪酸鉱物
5.水晶 rock crystal
成分は二酸化ケイ素.水晶は竹森産鉱物の主役といえる.当産地の水晶は,一般的な無色
透明のものも多いが,「草入水晶」と称する,苦土電気石を包有物(インクルージョン)と
するものがある.草入り水晶は日本での典型的標本の産地とされている.また,これ以外に
も幾つかのバリエーションがある.これを以下にまとめて示すと,
| 包 有 物 | |
| 無色水晶 | なし |
| 草入水晶 | 苦土電気石 |
| マリモ入り水晶 | 緑泥石,赤鉄鉱 |
| 星入り水晶 | 白雲母 |
| 綿入り水晶 | 角閃石綿? |
| 硫黄入り水晶 | 硫黄 |
珪酸塩鉱物
6.苦土電気石 Dravite
草入りの「草」にあたる鉱物.水晶中に細針状結晶のインクルージョンとなるほか,石英
中に長さ数cmに達する透明感のある結晶もある.
7.白雲母 moscovite
水晶の根本や,母岩中に群生.晶洞中では自形をなすものもある.
8.緑泥石 cholorite
マリモ入りの「マリモ」にあたる鉱物.草緑色鱗片状のインクルージョン.
D.おわりに
昔から有名な竹森を約5ヶ月ぶりに訪れて,最大4cmほどのマリモ入り水晶や山入り水晶,
両錐のものをはじめ,前回以上の標本が採集できた.表面採集でも,まだまだ良い標本が期
待できそうである.ズリを掘れば,更なる良品の期待も持てます.天気にも恵まれて充実し
た採集が出来ました.ただ,やぶ蚊が多く,煩わしかった.次回は,硫黄の入った水晶を探
してみたい.
最後になりましたが,水晶山での採集を快諾してくださった山主の雨宮氏,産地,標本の
画像を下さったN氏,Y氏,そして,採集に同行してくれた友人のK君に深謝いたします.
E.引用文献
草下英明(1982):“鉱物採集フィールド・ガイド”,(草思社)
益富寿之助(1974):“鉱物”,(1974)