38)群馬県下仁田町西ノ牧鉱山 Nishinomaki Mine,Shimonita Town,Gunma Pref..
A.はじめに
年の瀬もいよいよ押し迫り,今年の採集納め(?)を鶏冠石の産出で名高い群馬県下仁田町
西ノ牧鉱山で行った.
今年も親切な石友のおかげで数多くの産地をめぐることができ,採集の面ではとても充実し
た1年だった.来年も頑張っていきたいと思います.皆様,どうぞ今年もよろしくお願い致し
ます.
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| 図1 ふさがれた坑道 |
B.産地及び交通
<産地>
西ノ牧鉱山は群馬県下仁田町南野牧に位置するヒ素を目的に採掘を行った珍しい鉱山で,古
くは西牧(さいもく)鉱山と称した.花火の原料としてヒ素を採掘していたといわれる(桜井
・加藤 1972).また草下(1982)にも大きく紹介されている有名産地である.
町営バス終点の「市ノ萱」バス停近くに東平橋がかかっており(国道254号線は新東平橋を通
る),橋の手前に沢(日影畠沢)が流れ込んでいる.沢沿いの林道を800m程さかのぼった右手
に土止めと砂防ダムが見える.その上部にいくつかの旧坑(図1)とズリがある.ここが産地
である.
浅所鉱脈鉱床〜噴気性鉱床と思われ,変朽安山岩(プロピライト)中にほぼ直立する粘土化
した(鶏冠石を作った鉱液によって安山岩中の鉱物が変質したものである)鉱脈を採掘したも
のである.
<交通>
最寄駅:上信電鉄 下仁田駅(終点) 「市ノ萱」行きバス利用 終点下車
C.採集鉱物
硫化鉱物2種を採集した.
硫化鉱物
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| 図2 鶏冠石 |
1.鶏冠石 Realgar
その名の通り,鶏のとさかの如く赤い色をしています.化学組成はAsSである.数多い鉱物
の中でも鮮やかな色を持った鉱物のひとつで,近年は数cm大の中国産の標本が出回っている.
単斜晶系で当地産のものにも短柱状の頭つき完全結晶があるが,多くは脈状,皮膜状である.
硬度は2でもろく,比重は3.6.へき開は1方向に完全である.まれに晶洞中に頭つきの群晶が
あり,非常に美しいものであるが,何しろ粘土脈中のものなので,ぼろぼろになりやすいのは
残念なことである. また鶏冠石は日光にも弱く,分解して粉末状になってしまう.筆者の大
学の教室にも,もはや黄色の粉末となってしまった鶏冠石がおいてある.
なお,ヒ素という元素は非常に用途が広く近年までは医薬品,殺虫剤,殺鼠剤,顔料,毛皮
の脱毛止めなどにも使用されていたが,その毒性が強いために今日では特殊ガラス製品,銅・
鉛などとの合金,木材・皮革の防腐剤,セラミックス,染料,半導体などに利用されています.
ヒ素は毒という印象があるが,金属ヒ素そのものよりは,亜ヒ酸や水酸化ヒ素のほうがはるか
に毒性が強く危険である.なお鶏冠石は水溶性でないのであるが,水に溶けやすい砒素化合物
が表面に生じている可能性もあるので,鶏冠石をなめたりするのは止めた方が良い.また産地
で食事を取るときにも,どこかで綺麗な水で手を洗ってからにした方が良いだろう.
2.石黄 Orpiment
初成的に産するものと,鶏冠石の分解物として産するものがある.橙色〜黄色粉状で,稀に
柱状結晶をなすものがある.鶏冠石と同様に色調は鮮やかで,2種の鉱物が共生するものは,
毒々しささえ感じさせるものもある.
ところで,鶏冠石の分解産物は全て石黄だと思っていたのだが,橙色をしたものには,パラ
鶏冠石(Pararealgar 化学組成AsS,単斜晶系,硬度1〜1.5,ガラス光沢〜樹脂光沢,比重
3.52,色 輝黄色・橙黄色,条痕 輝黄色,劈開無し)もあるということを最近知ったが,そ
の存在比率はどの程度なのだろうか?
D.おわりに
冒頭にも書いたが,今年最後の採集で有名な西ノ牧鉱山を訪れて自力で鶏冠石を採集するこ
とが出来てよかった.実は今年の6月にも西ノ牧鉱山を訪れたのだが,激しく雨が降り出した
ので,産地の手前で引き返してしまったのである. また,色々なWebページを見ていると,
余り期待は持てなさそうだ,と思っていたが,運良く完全結晶をも採集することが出来た.
来年も頑張っていきたいと思います.よろしくお願い致します.
E.参考文献
加藤昭(1999):”硫化鉱物読本”
櫻井欽一・加藤昭(1972):”鉱物採集の旅 東京周辺を訪ねて”
草下英明(1982):”鉱物採集 フィールドガイド”
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