33)秩父鉱山大黒坑のビンドハイム石 Bindheimite of Daikoku Adit,
Chichibu Mine,Saitama Pref..
A.はじめに
前々回秩父鉱山を訪れた際(第23回)に筆者の弟が菱マンガン鉱に黄色粉状の鉱物が
付着していることに気付き,筆者もその鉱物を見たが,何の鉱物か分からなかった.何
かの鉱物の風化物だろうと適当にお茶を濁しておいたが,後に千葉県立中央博物館友の
会のA氏に弟がその鑑定を依頼し,ビンドハイム石であると判明した.そこで先日,秩
父鉱山で筆者の採集した菱マンガン鉱の標本を注意深く見てみるとその中の1つにビン
ドハイム石の付着したものがあった.
B.産地及び交通
<産地>
秩父鉱山は松原・加藤(1982),須藤(1979)などに詳しく紹介されている,
関東を代表する鉱物産地である.産出する鉱物の数は非常に多く,現在でもかな
りの種類の鉱物が採集可能である.また水酸エレスタド石という新鉱物も当地か
ら発見されている.当地は典型的なスカルン鉱床であり,昭和中期まで各種の金
属鉱物,珪石を採掘していたが,現在では石灰石の採掘だけが行われています.
また歴史も古く,甲斐武田氏が金を採掘したとも言われ,江戸時代にはエレキ
テルなどの発明で有名な平賀源内が探鉱に訪れています.金は閃亜鉛鉱に伴う,
ひも状のものが大変有名です.
東京方面からなら国道140号線から中津川沿いの県道210号線に入りひたすら上
流へ向かう.ただ現在はダム工事のため道が以前と変わっていることに注意が必
要である.名古屋・山梨方面からなら塩山市から雁坂トンネル経由が便利.県道
を進むと,左手に坑道と作業場があるところに出る.ここが秩父鉱山大黒坑です.
採集は河原と,そこに流れ込む沢の転石から行います.金属鉱物を多く含む鉱
石を見つけるときに,鉱石の新鮮な面が出て,金属光沢が分かれば良いのですが,
金属光沢は表面が酸化して真っ黒くなっていることがある.そのような時は持っ
てみて重く感じる石(金属鉱物は比重が大きいので重く感じる)を割ると良い.
<交通>
最寄駅:秩父鉄道 三峰口駅 「中津川」行きバス利用 「出合」下車
C.採集鉱物
酸化鉱物
1.ビンドハイム石 bindheimite
組成式は Pb2 Sb2 O6 (O,OH).立方晶系.硬度4〜4.5.比重7.3g/cm3.黄
安華(Stibconite)族鉱物.別名,含水アンチモニー鉱,含水安鉛鉱とも称す.
当産地のビンドハイム石は,毛鉱に伴って産するものや菱マンガン鉱中に黄色粉
状で産出するものがある.組成式のように鉛とアンチモニーの二次鉱物であるか
ら毛鉱の風化生成物であると考えられる.
なおビンドハイム石の名称は最初にこの鉱物を分析したドイツの化学者 J.J.
Bindheim(1750〜1825)に因んで名づけられた.
D.おわりに
これまで秩父鉱山には2回訪れたが,毛鉱,ブーランジェ鉱は採集できず,量
の少なさを感じたが,意外な形で秩父鉱山のアンチモニー鉱物と出会うことが出
来た.次の目標はもちろん毛鉱,ブーランジェ鉱です.秩父鉱山は,他にもさま
ざまな「銘柄」標本が産出する産地なので今後も引き続き探査していきたいと思
います.
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