A.はじめに
夏休みも折り返し地点を過ぎると,何となく焦りを感じるものである.小学生
・中学生の頃に,8月31日に慌てて宿題をしたことを思い出す...
さて,今回は日本を代表するスカルン鉱床鉱山の秩父鉱山を訪れた.今回は秩
父鉱山の主力坑の一つであった大黒坑付近で採集を行い,各種の金属鉱物などを
採集した.
B.産地及び交通
<産地>
秩父鉱山は松原・加藤(1982),須藤(1979)などに詳しく紹介されている,
関東を代表する鉱物産地である.産出する鉱物の数は非常に多く,現在でもかな
りの種類の鉱物が採集可能である.また水酸エレスタド石という新鉱物も当地か
ら発見されている.当地は典型的なスカルン鉱床であり,昭和中期まで各種の金
属鉱物,珪石を採掘していたが,現在では石灰石の採掘だけが行われています.
また歴史も古く,甲斐武田氏が金を採掘したとも言われ,江戸時代にはエレキ
テルなどの発明で有名な平賀源内が探鉱に訪れています.金は閃亜鉛鉱に伴う,
ひも状のものが大変有名です.
東京方面からなら国道140号線から中津川沿いの県道に入りひたすら上流へ向か
う.ただ現在はダム工事のため道が以前と変わっていることに注意が必要である.
名古屋・山梨方面からなら塩山市から雁坂トンネル経由が便利.県道を進むと,
左手に坑道と作業場があるところに出る.ここが秩父鉱山大黒坑です.
採集は河原と,そこに流れ込む沢の転石から行います.金属鉱物を多く含む鉱
石を見つけるときに,鉱石の新鮮な面が出て,金属光沢が分かれば良いのですが,
金属光沢は表面が酸化して真っ黒くなっていることがある.そのような時は持っ
てみて重く感じる石(金属鉱物は比重が大きいので重く感じる)を割ると良い.
また金属鉱物の鉱石以外にも,花崗岩質ペグマタイト,晶質石灰岩(いわゆる大
理石)が採集できます.
<交通>
最寄駅:秩父鉄道 三峰口駅(乗用車利用が良い)
C.採集鉱物
硫化鉱物4種,炭酸塩鉱物3種,珪酸鉱物1種,珪酸塩鉱物2種を採集した.
硫化鉱物
1.黄鉄鉱 pyrite
スカルン中など最も多量に存在する金属鉱物.自形結晶も多く,金属光沢も強
いので分かりやすい.黄銅鉱とよく似るが,区別の仕方として黄銅鉱より色が淡
いこと,自形結晶の割合が高いことが挙げられる.黄銅鉱,方鉛鉱など各種の硫
化鉱物と共生したり,菱マンガン鉱中に粒状結晶として含まれている.
2.黄銅鉱 chalcopyrite
最も重要な銅鉱.真鍮色金属光沢.表面は酸化されやすい.黄鉄鉱と共生.自
形結晶をなすものも見られる.
3.方鉛鉱 galene
その名の通り六面体のサイコロ状結晶の集合体で産する.比重が大きく,小さ
な塊を持ってもズッシリとした重さを感じる(比重大7.5g/p3).帯青黒色金
属光沢.ろうそくの炎で熱すると角が融解し,丸くなる.
4.閃亜鉛鉱 sphalerite
最も重要な亜鉛鉱.色彩の変化が大きく,黒色不透明金属光沢のものから,橙
色透明ガラス光沢のものまである.当産地のものは鉄を多く含む,鉄閃亜鉛鉱と
いわれるものである.黒色不透明だがガラス光沢が強い.硬度3.5〜4,比重4.0
g/p3.
炭酸塩鉱物
5.方解石 calcite
晶質石灰岩を形成するものや鉱石に伴う脈石鉱物として産出.特徴は白色半透
明で三方向への完全なヘキ開があること,塩酸に発泡して溶けること,等がある.
またマンガンを含むことによると思われる,やや赤みを帯びたものもみられる.
6.菱マンガン鉱 rhodochlocite
当地でよく見られる金属鉱物.マンガンの主要鉱石だが,大黒坑ではマンガン
鉱を採掘対照としていなかったようでよく見られる.桃色塊状をなす.中に黄鉄
鉱などの金属鉱物を伴う.表面を酸化マンガンの酸化皮膜が覆っているため,河
原の転石の中では分かりにくい.表面の黒いマンガン鉱石を見つけるにはコツが
あり,真っ黒で重たい石を探すということである.マンガンは金属元素なので,
比重が大きいことを利用するのである.これは昨年の池袋で開催されたミネラル
フェアの講演会で国立科学博物館名誉研究員加藤 昭 博士も言っています.
7.孔雀石 Malachite
黄銅鉱は普通にあるが孔雀石は少なく,川に流れ込む沢の中から緑色皮膜状の
ものを見つけた.
珪酸鉱物
8.水晶 rock crystal
各種の鉱石や花崗岩質ペグマタイトの晶洞中に数mmから1cmくらいの小さな水
晶が産する.
珪酸塩鉱物
9.鉄電気石 dravite
花崗岩質ペグマタイトの晶洞中に数mmから1cmくらいの黒色柱状結晶が産出.
10.正長石 Orthoclase
花崗岩質ペグマタイトの晶洞中に数mm大の白色柱状結晶が産出.
D.おわりに
関東を代表する鉱物産地,秩父鉱山はとても範囲の広い鉱山であり,今後も訪
れてみたい.埼玉県は暑かったが,大黒坑周辺はとても涼しく,夏でも快適に採
集できるのでお勧めである.<2003/8/2 採集>

図1 鉱山施設跡(旧坑) 図2 大黒河原
E.参考文献
松原聰・加藤昭(1982):鉱物採集の旅,(築地書館)
須藤和人(編)(1979):埼玉県地学のガイド,(コロナ社)