注意:甲武信鉱山は入山料が必要です.
A.はじめに
先日の疲れを「湯沼鉱泉」で癒し,採集会2日目を迎えた.今日は38名の参加者が
あるそうで驚きました.車に分かれて乗り込み,甲武信鉱山へと向かう.
長野県の金峰山北方にあたる地域も昔から水晶産地として有名であった.川上村川
端下,同村 小川山,同村 湯沼などがその名を良く知られている.ところが最近はど
こも場荒れがひどくなっているのが現状で,節度をもった採集を必要とします.
ここで採集会を企画して,私を参加させて下さったN氏,3日間お世話になったY
氏をはじめ,参加者皆様に厚く御礼申し上げます.
B.産地及び交通
<産地>
甲武信鉱山は長野県川上村東部の長峰の北東斜面に位置している.明治初期の頃か
ら鉱物産地として有名であり,鉄を採掘していた時期もある.もともとは甲斐の武田
信玄が金を掘ったとされており,(草下 1982)江戸時代には山の裏側にあった川端
下坑が長尾金山と称して金の採掘がかなり盛大に行われていたようである.
鉱床は接触交代鉱床で,各種のスカルン鉱物や貫入してきた石英脈から水晶が採集
できます.当産地の鉱物は大きさ,美しさ,共に優れたものが多く,採集に行けばそ
れなりの成果が期待できる産地である.しかし,鉱山の規模も大きいので,最初は誰
かに案内してもらうと良いでしょう.なお甲武信鉱山は私有地であり,採集にあたっ
ては入山料(1000円)が必要です.ただし「湯沼鉱泉」宿泊者は無料です.左の図は
鉱山入口と,そこに立つ注意の看板です.
<交通>
最寄駅:JR小海線 信濃川上駅 「梓山」行きバス 終点下車(車利用が良い)
C.採集鉱物
≪ベスブ石露頭・ズリ≫
酸化鉱物
1.磁鉄鉱 Magnetite
主要な鉄鉱石の一つ.八面体の自形結晶らしいものが採集できた.その名の通り強
い磁性があり,磁力の特に強いものは天然磁石と称する(長野県大日向鉱山産など).
珪酸塩鉱物
2.ベスブ石 Vesvianite
緑褐色〜あめ色で強い光沢をもつ板状〜柱状結晶.条線が良く発達している.最大
で2cm近いものが採集できた.ベスブ石露頭はここ最近有名になった場所で,かつて
は露頭から良品が取れたようであるが,現在はすでに露頭はやせ細り,露頭を崩した
ズリのほうが効率的に良品を効率的に採集できるとのことでした.
なお,ベスブ石の名は世界史でもその名の出でくるイタリアのベスビオ火山に因む
ものである.研究されたものがベスビオ火山産の標本だったためである.火山の放出
岩中に産するらしい.
3.灰鉄ザクロ石 Andradite
ベスブ石と共生,不透明の粒状結晶.
≪松茸水晶ズリ≫
珪酸鉱物
1.水晶 Rock crystal
平行連晶の一種であるマツタケ水晶は採集できなかったが,7本の松茸水晶が採集
されました.筆者が採集したものは緑泥石? の入った4cmほどのものでした.
≪緑水晶ズリ≫
珪酸鉱物
1.水晶 Rock crystal
土の中に緑水晶の単離結晶や群晶(右図2;T氏撮影・提供)が埋まっているもの
を採集.H氏(愛知)が30pはあろうかという巨大な群晶を採集した.範囲はある程
度の広さがあるので,なるべく手のついていない場所を掘ると良品が採集できるかも
しれない. 筆者も幅10cmを超える緑水晶の群晶や,山入りになった緑水晶を採集し
た.なおこのズリの水晶の緑色の原因は,緑泥石だけではなく,透緑閃石(アクチノ
閃石)も主要な原因の一つのようです.緑水晶を透明な結晶面から内部を観察すると
緑色繊維状の結晶が入っているのが観察できます.
≪”日本式双晶”坑道≫ 下の図が坑道入口.やや狭いが中は広い.
炭酸酸鉱物
1.方解石 Calcite
最後の採集地,日本式双晶の採集できる坑道を訪れる.何を目的に採掘された坑道
なのか分からないが,坑道内は透明方解石が一面に転がっている.
複屈折の明瞭に認められる良品も数多くある.後日,大学で友人に実験して見せた
が複屈折に驚くと同時に,このような美しいものがたくさん転がっていることにも,
大変驚いたとのことでした.
珪酸鉱物
2.水晶 Rock crystal 日本式双晶 Japanese law twin
最後の採集地,日本式双晶の採集できる坑道を訪れる.何を目的に採掘された坑道
なのか分からないが,坑道内は透明方解石が一面に転がっている.A氏(奈良),Y
父子(千葉成田),そして筆者が坑道内に入り,水晶の入ったがさがさの岩塊を採集
する.坑道内での選別作業は暗くてやりにくい(Y君はそれでも2つも見つけていた
)ので,袋に入れ外に運び出し,皆さんに鑑定してもらう.
数十分の採集で参加者全員分の双晶が確保できて,筆者も幅1cm程の双晶が2つ付
いた標本を頂いた.日本式双晶の特徴は,周りの水晶に比べ大型化する傾向にあるこ
と,平板状になるものが多いことです.
D.おわりに
以前から一度訪れて見たいと思っていた甲武信鉱山を訪れて,各種の鉱物の素晴ら
しい標本を採集できた.他の産地とは別格です.この産地は本当に何度でも行きたい
と思ってしまう産地である.
ただし,当産地は私有地であるので安全に注意して楽しい採集をしましょう.それ
から5月連休でも”日本式双晶坑道”内は氷とツララの世界です.薄着で行けば,確
実に風邪をひきます.これは薄手の長袖シャツ一枚で入った人(筆者)の身に実際に
起こったことですから間違いありません.
さて,前日の八幡山旧坑での水晶採集に始まった5月連休採集会もあっという間に
終了となった.同好の人達と,本当に楽しく充実した時間を送れたことは大変良かっ
た.ここで改めまして参加者の皆様に深い感謝の意を表します.
E.参考文献
草下英明(1982):”鉱物採集フィールドガイド”(草思社)
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