A.はじめに
一般にスカルン鉱物として良く知られるものとしてザクロ石,輝石や珪灰石などがある.
ザクロ石や輝石はそれぞれ構成成分によって細かく分類され,スカルンに産する輝石な
らば化学組成 Ca (Mg, Fe, Mn) Si2 O6 のうちMgの卓越する透輝石,Feの卓越する灰
鉄輝石,Mnの卓越するヨハンセン輝石の 3成分に分類される.定量分析を行えば,そ
の輝石がどのような成分比を持っているか決定することが出来る.
表記洞戸鉱山杢助坑は,薄い板状の透輝石結晶を産する事で良く知られており,古
い標本では長さ 5〜6 cm もあるオリーブ色の柱状結晶がある.
2003年当時は,少ないながらも cm サイズの結晶が採集出来たが現在は如何だろう
か? 機会があればまた訪れてみたいものである.
B.産地及び交通
<産地>
洞戸鉱山は,岐阜県洞戸村に位置し,銅,鉛,亜鉛を目的に稼行されたスカルン鉱
床である.杢助,杉原,梅保木といったいくつかの鉱床が分布することが知られている.
日本鉱業協会(1965)によれば,産出した金属量は鉛 5t,亜鉛 3.7tとされて
おり,鉱山としては非常に小規模なものであったようである.
当地域の地質は,主に粘板岩,砂岩,石灰岩からなる付加体の中生層である.火成
岩としては花こう斑岩及び石英斑岩が分布し,これらのマグマ-熱水活動によってスカ
ルン鉱床が生成したものと考えられる.洞戸鉱山では鉱床の北側に石英斑岩が分布して
おり,杉原坑では100 m内外,杢助坑では 700 m程度の距離を持つ(日本鉱業協会,1965)
なお当鉱山周辺地域には金城,相戸など数多くのスカルン鉱床が知られており,様
々な鉱物が報告されている.
<交通>
最寄IC:東海北陸道美濃ICまたは郡上八幡IC バスの便あり(岐阜バス板取線洞戸高見停留所)
C.採集鉱物
1.透輝石 Diopside
杢助坑のスカルン構成鉱物のうち最も普通なもの.スカルン中の晶洞や旧坑周辺の
土砂中には自形結晶が認められる.かつては長さ 5〜6 cm のオリーブ色の柱状結晶
が産した.
透輝石は多様な産状を持った鉱物であり,特に造岩鉱物として産出することが多い.
玄武岩あるいは安山岩中の斑晶やエクロジャイトや広域変成岩の構成鉱物として良く
観察される.
スカルン鉱床においては,ドロマイトのようなマグネシウム分を含む炭酸塩岩を原
岩とする場で普通に産出する.不純物の少ない単純なスカルンでは,無色〜白色とな
るため,特に明確な結晶形を示さないものは似たような産状の鉱物と区別しがたい場
合もある.
D.おわりに
翌2004年に訪れた際には,ズリの中から 1cmを超える自形結晶が採取出来たが,
その後の引っ越しで行方不明となり,現在も見つかっていない.もし再び訪れる機
会があればまた採取したいと思うが,現在はどうであろうか.
E.引用文献
日本鉱業協会(1965):“日本の鉱床総覧”