A.はじめに
学芸員資格取得のための博物館実習を行っている時に,標本整理の仕事を割り当て
られた.その時に福島県白岩鉱山の紅石英を目にし,2006年春に行って何も採れなか
った合戸の代わりに採集すべく向かったが,既に産地は公園として整備されており,図
鑑などにあるような見事なものは見つけられなかった.そこで白沢村から第二の目的地,
田村市(旧 都路村)石黒に向かった.
B.産地及び交通
<産地>
石黒のペグマタイトは試堀程度の小さなものであるため,詳細な沿革などは知らない
が,戦時中あるいはそれ以前の古いものであるようだ.恐らく稀元素鉱物を狙ったものと
思われるが,すぐに中止したようである.
<交通>
最寄IC:磐越道船引三春ICまたは常磐道富岡IC バスの便あるが遠い(福島交通古道車庫行き)
C.採集鉱物
1.水晶(煙水晶) Quartz (Smoky Quartz)
ペグマタイトに産する石英はしばしば煙水晶や黒水晶と称されるような有色のものが
産出するが,当産地も煙水晶が多く認められる.2〜3 cm程度の小さなものであるが,
自形のものも採集可能であった.また鉄電気石が結晶面上に成長したものもある.
2. 鉄電気石 Schorl
一昔前にはトルマリンから出るマイナスイオンがどうこうと謳って随分怪しげな商品が
出回っていたためにその名は広く知れ渡る所となったが,電気石という名の由来は,電
池のような機構があるからでもなく,イオンを放出するわけでもなく,加熱したり,摩擦を
加えると静電気を帯びることから付けられた和名である.
電気石(トルマリン)というのは単一の鉱物名ではなく,鉄電気石,苦土電気石,フォ
イト電気石,リシア電気石,灰電気石などのグループ名である.ホウ素を含む事から,
ペグマタイトに産出することが多いが,スカルン鉱床(例えば尾平鉱山)や熱水変質帯
(例えば栃木県百村)に産出することもある.
当産地の電気石は鉄電気石で,細柱状結晶をなす.結晶径はせいぜい数 mm 程度
であるが,結晶長 5 cm程度のものまである.試堀坑周辺のマサ化したズリの中から採
集する.当産地の電気石は結晶面が風化しておらず光沢も強いのも特徴的である.
D.おわりに
産地の詳細が分からないまま訪れた産地であったが,産地入口の民家の方が丁寧に
場所を説明してくれたため,特に迷うこともなく到着出来た.ありがたい事である.訪問か
ら 4年が経過したが現況が分からないので,また行ってみたい産地である.