イヤーブックの屈辱
2003年9月15日(月)
阪神18年ぶりの優勝。この日記では、ちょくちょく阪神ファンいじってるので、ここで一応ふれとかないとね。
それはさておき、そういえば、イヤーブックにまつわるエピソードでこんな屈辱的な話があった。
この話を始める前に、皆さんに知っておいてもらわないとどうしようもないことがある。それは、イヤーブックとは何かということである。
イヤーブックとは、卒業アルバムのようなものであるが、少し違う。日本では、卒業時に卒業アルバムと称して、
小学校なら6年、中学高校なら3年分の思い出を凝縮した上で卒業生に一人一冊渡されるものだが、
アメリカにおけるイヤーブックは毎年発刊されるのだ。その学校の全生徒の顔写真が並び、
また、クラブ活動などの一年間の功績を称えたりに膨大なページを割くのだ。だから、我々は年を終えるごとにごっつい冊子が溜まっていき、
去年とそれほど変わってない皆の満面の笑顔の写真が並んでるのを見られるわけだ。
そう、それは、僕が高校のJunior Grade(高校2年生)の時であった。イヤーブックに載せる写真を撮影するから、
ランチタイムにB教室に来なさいという呼び出しを喰らった。腹へっとんねん。飯くわせや、あほんだら。
でも、我慢してB教室に行くと、何人か来て撮影していた。列の後ろから教室内を覗き込むと、中が一望できた。
撮影用に設けられた一角に椅子があり、そこに女の子が一人座っていた。よく知ってるやつだ。キャシーという。
ほんの少しかわいいからって、タカビーな女だ。いつもムスッとしている。しかし、キャメラマンが、「はい、笑って。」というと、
今までムスッとしていたキャシーは急に満面の笑顔になったのだ。何のための笑顔だ、てめえ。
しかし、皆笑顔だけは素敵なやつらばかりだ。世の中よほど面白いことが溢れているらしい。こぼれる笑顔は、天使のそれであった。
でも、僕は、彼らほど顔の筋肉が発達していない。両ほっぺが彼らほども、ニーッとつり上がらない。
何より、皆がしてることを自分も馬鹿みたいに繰り返すのは、昔から大っ嫌いだ。
だから、私は、しばらくトイレに篭って、中国の伝統芸能の化粧を施して撮影に臨んだ。ちょっと自慢するが、
この伝統芸能はちょっとしたマジックで、派手な化粧と派手な衣裳で踊りまくるのだが、踊りの途中一瞬袖などで顔を隠す。
そして、再び客に顔を見せたときには、顔の化粧がガラリと変わっているというものだ。
これには、ちゃんと種があるのだが、種は一切公表されていない。代々、その伝統芸能界の弟子にのみ受け継がれているのである。
しかし、僕は、種がどうしてもわからないことに憤慨して、彼らの映像が納められたヴィデオを見て、一年がかりで種を解き明かした!!
そこで、撮影の段階になって、その場にいたキャメラマンに見せてやった。キャメラマンたちは、口々にこう言った。
“Oh my god!!”
“Holy shit!!”
“Gosh!!”
“アンニョンハセヨ・・・!!”
“Oh my goodness!!”
僕は、調子に乗り始めて、何度もメイクを変えてみた。その度、彼らは、口々にこう言った。
“Oh my god!!”
“Holy shit!!”
“Gosh!!”
“アンニョンハセヨ・・・!!”
“Oh my goodness!!”
彼らは、パシャパシャとシャッターを切り倒した。僕は、得意げであった。撮影が終わって、僕は彼らにこう要求した。
「イヤーブックには、『変化前』『変化後』という具合に2枚の写真を載せるように。」
すると、彼らの顔色は一瞬にして変わり、怒りをあらわにしながら彼らは口々にこう言った。
“Oh my god!!”
“Holy shit!!”
“Gosh!!”
“アンニョンハセヨ・・・!!”
“Oh my goodness!!”
僕が、「何やと、コラ!!そんなことは、できん?一人一枚やと?散々わしのショーを見といて何ぬかしとんねん!!」というと、
彼らの一人が理事長を呼びに行った。理事長は、白髪のオールバックとスマートな口ひげが粋な初老の紳士であった。
脂っこいもんばっかり喰ってるのか、巨漢であったが、穏やかな男であった。
彼は、私にプレッシャーを与えないように配慮してか、私とは真っ向から向かい合わず、私から45度ずれた方向に体を向け、
顔だけこちらに向けて話をしてきた。彼は、穏やかであったが、所詮、私立高校の理事長、客商売だ。
資本主義的スマイルを浮かべ、私をしきりに立てながら穏やかに対話を試みてきたが、彼の言ったことを手短に要約すると
「おととい来やがれ、愚か者め。」
ということになる。私は、憤慨し、ごねた。ひたすらごねまくった。時はすでに、夕刻をまわり、
外は暗くなっていた(イヤーブックへのこの要求のために午後の授業を全てぶっちぎるはめになった。何てわかりの悪いやつらだ。)。
初老の紳士は、依然穏やかであったが、額に脂汗をかいていた。年のわりにがんばったのだろう。
しかし、もう限界らしく、
「わかりました。何とかしてみましょう。」
と言った。
「最初から、そう言わはったらよろしおまんねん。また、何かあったら言うとくんなはれや。」
私は、意気揚揚と引き上げた。しかし、それは、これから始まる長い戦いの序曲に過ぎなかったことを、この時の私は知るよしもなかった・・・。
その年が終わって次の年の最初、昨年のイヤーブックが刊行された。去年の生徒達の満面の笑顔が並ぶ。
その生徒達の大部分は今年も、たいがい同じ授業を取って、そうでなくても廊下で顔をあわすのだ。
しょうむない笑顔をたくさん見せられて、一体何の記念なのだ!!しかし、僕は、そんなやつらと一味も二味も違う。
何せ中国の伝統芸能の『変化前』と『変化後』なのだ。俺の素顔は写真を見る限り伝わらない。素晴らしい。
そう思って、いそいそと僕の写真を探す。しかし、私のところには1枚のアヒルの顔写真が載せられてあったのだ。
しかも、セピア色だ。これをかわ切りに、学校との壮絶な戦いの日々が始まるのである。
Written by Kimberly Chang
Translated by koichi kimuRa